5月号 聖母月に想う
聖マリア修道女会 丸岡京子
新緑の木々の間を吹く爽やかな風。彩り鮮やかな草花が美しい聖母月。復活の喜びに満ち溢れる自然の中で、松原教会のお庭に佇むマリア像を眺めながら、ふと一つの場面を想い描きます。
それは、ナザレの村で、幼いイエス様と遊ぶマリア様の姿。
傍らで遊ぶイエス様を見つめながら、「かわいいイエス」と呟き、優しく見守っておられたことでしょう。
さて、幼稚園の子ども達に、「マリア様は、どんな人?」と尋ねると、彼らはすぐに「やさしい人!」と答えます。子ども達にとって、マリア様は優しい人。
ある日、クラスで3才の子が泣き出し、私はその子に寄り添っていました。
すると、それに気づいた他の3才の子がそっと近づき、何も言わずに、泣いている子の手を取り、ゆっくりとした足取りで、おもちゃのある方へ連れて行きました。泣いている子は、おもちゃに辿り着く途中で泣き止み、ふたりは一緒に遊び始めました。その子ども達は、普段は一緒に遊んでいませんが、その日から、大の仲良しになりました。
子ども達は、優しさに対する敏感な心を潜在的に持っているようです。誰かが泣き出すとすぐに近寄り、心配そうに顔を覗き込んで、「どうしたの?」と聞きます。何も言わないで泣き続けていると、「ママに会いたいの?」「ころんだの?」と聞き、何とか助けようとします。やがて他の子ども達も集まってきて、その中の一人か二人は、教師のところに走ります。「○○ちゃんが、泣いているよ。」
子ども達は、仲間の変化をすぐに察知し、急いで報告に来ます。問題が解決するまで、その子の周りをうろうろしています。
教師は泣いている子が落ち着いたところで、その理由を聞き出し、「もう大丈夫。」と子ども達に伝えます。彼らは「そうか。」と納得し、安心して自分の遊びに戻ります。子ども達は、人の優しさを知り、人に優しくすることも知っています。この世に生を受けた時から、沢山の優しさを体験しているからでしょう。
人々と共に歩み、使命を全うされた教皇フランシスコの言葉が、心に響いてきます。「無関心の文化に対し、他者を労わる優しさの文化を築くように!」
「優しい人になることで、人々に希望を十分に与えることができるのです。」
主の復活を喜び祝う復活節。様々な問題を抱える現代世界にあって、教皇様の教えを心に留め、マリア様の優しさに倣い、人々に希望と喜びをもたらすことができるよう、切に祈り求めます。