12月号 挫折を抱きしめたら

助任司祭 ガル ブブン

いつもあっという間の感覚で、2024年の終わりが近づいてきます。この時期に、今年ほぼ一年間で歩んできたことを振り返る機会になり、いくつか反省することにもなるでしょう。教会のあるグループはちゃんと反省会をし、来年の奉仕がより良いものになるよう望んでいます。

反省といえば、福音書で登場したイエスの一番弟子であるペトロの物語を思い出します。ご存知の通り、イエスが弟子たちと最後の晩餐を共にした後、しばらくしてイエスが捕えられ、弟子たちはイエスを残して逃げてしまうのです。それだけでなく、ペトロはイエスのことを知らないと強く否定し、裏切ってしまうのです。

これがペトロの裏切りの物語ですが、人間的挫折の物語でもあります。おそらくペトロは自分の裏切り・大失敗について生涯その思いが消え去らなかったでしょう。しかし、だからこそペトロはその後、キリストに従う人生を選択しました。自分の裏切りを反省・悔いながらも、彼は前に進みます。ある時、自分は決して裏切ったりしないと啖呵を切ったペトロに、イエスがかけた言葉があります。「私は信仰がなくならないように、あなたのために祈った。だから、あなたが立ち直った時には、兄弟たちを力づけてやりなさい」(ルカ22・32)。

なんてはっとさせられる言葉でしょう!イエスは自分の弟子の痛恨の裏切りをあらかじめ知っていたのみならず、ペトロがそこから立ち直り、彼が同じように苦しむ者達を励ます人間に成長することを見通していたのでしょう。ここには、自らの裏切りに立ちすくむペトロは、すでにイエスの赦しの眼差しの中にいたといえるでしょう。

私たちの共同体にはペトロの裏切りのようなものなんてないでしょうが、私たちの家族や仕事、教会の環境には挫折することがあるでしょう。人々の関係がうまくいかなくなり、最も親しい友人でさえも、いさかいや誤解などによって、その交わりを失ってしまうことがあるでしょう。それから、孤独に陥り、生きていく勇気を失ってしまうこともあるでしょう。そういった場合には、ペトロのように自分の失敗を悔いながら、挫折を抱きしめ、進みたいと思います。

立ち直り、立ち直った同じ苦しみの中にいる仲間を助けましょう。それが、イエスの弟子ペトロに委ねられた使命です。人生最大の挫折をしたペトロはこのようにして挫折を乗り越えていくのです。私たちも、神の助けによって、一緒に乗り越えていけるのです。