3月号 ペルソナ
信仰養成委員会 佐々木康浩
相手のことを「思いやる」ことは、とても大切なことですね。皆さんは、どこまで出来ていますか。家族が相手なら、なんとか対応できるかもしれません。では、お隣にお住まいの方、職場や学校での知人・友人はどうでしょうか。教会周辺にお住まいの方々について、思いやることは出来ますか?
約20年前まで、コンピュータは使い勝手が悪く、専門の技術者だけが使うものでした。中高年の方は緑色の文字を覚えておられると思います。メニュー表示があれば良いほうで、下手をするとプログラムを書かないと、コンピュータは思ったような動作をしてくれませんでした。
マイクロソフト社にアラン・クーパーという人がいました。コンピュータは難しすぎて普通の人が使えないと思った彼は、万人向けではなく、たった一人のためにコンピュータのメニューをデザインします。そして出来上がったものがエクセルという表計算ソフトのメニュー表示です。今では、ほとんどのソフトウエアのメニューで採用されていますね。
似たような例として、客室乗務員用に開発されたキャスター付きキャリーバッグ、聖歌集のしおりとして利用された(粘着力の弱い)ポストイットなどがあります。
企業のマーケティング戦略では、特定の一人のために商品やサービスを開発することが一般的になっています。万人向けの商品は、機能が盛りだくさんで使いにくく、結局、誰にも使われないものなのです。
この、特定の一人のことを「ペルソナ」と言います。直訳すれば仮想人物です。富士通では、子ども向けのホームページを立ち上げる際に、次のペルソナを設定しました。
・佐藤美咲ちゃん(10歳)
・明るく温厚でクラスの人気者
・大手メーカー勤務の父と、専業主婦の母、2つ下の妹の4人家族
・好奇心旺盛で、疑問点はわかるまで調べないと気が済まない
実は、美咲ちゃんは実在の人物ではありません。でも、このペルソナがあるため「美咲ちゃんなら、どっちの画面が好きかな」「美咲ちゃんにとって、使いやすい画面は何かな」と開発メンバーの発想が展開し意識統一されやすくなりました。
企業にとって「相手」とは、消費者のことです。消費者のことを思いやることは難しいため、10代女性という漠然とした表現ではなく、佐藤美咲という名前をつけて、性格や好きなことなどを設定して、そのペルソナ向けの商品やサービスを開発するのです。
四旬節に入りました。約2,000年前にイエス・キリストは新しい契約を示され、使徒たちは異邦人への宣教を始めました。
2022年、コロナ禍で生きづらさを抱えている人は増えていると思います。でも、その人たちは引きこもっていて、教会からは見えません。
隣人に仮想の名前、ペルソナを付けて、その人が何に悩んでいるのか、求めているのか、考え行動するヒントにしてみませんか。